Filmmakers and translators unite

映画監督と翻訳者よ、団結せよ!

日本国外で日本映画を世界に発信しているニッポン・コネクションは字幕なしでは考えられません。今年の春に字幕翻訳者国際協会が映画監督の皆様へのアピールを発表しました。以下、ニッポン・コネクション映画祭でも翻訳者と通訳者として活動しているイザベル・マッテス と築野真紗子による和訳をシェアします。

Was wäre Nippon Connection ohne englische oder deutsche Untertitel für all die japanischen Filme? Internationale Verbände von Untertitel-Übersetzer*innen haben dieses Jahr einen Aufruf an alle Filmemacher*innen veröffentlicht. Wir teilen diesen hier in der japanischen Übersetzung von Isabelle Mathes und Masako Tsuno.

Englisch: avteurope.eu/2019/04/09/filmmakers-and-translators-unite
Deutsch: untertitelforum.de/politisches/ataa-aufruf
Französisch: beta.ataa.fr/blog/article/cineastes-et-traducteurs-ensemble


映画監督と翻訳者よ、団結せよ!

映画が国際的に成功を収めるためには、字幕が決定的な役割を果たします。ストリーミング配信プラットフォームの発展に伴い、近年映画やドラマを字幕付きで見る人が急増しています。にもかかわらず、字幕の質が見落されてしまう傾向がどんどん強まっています。その上、昨今では、誰もが字幕を作ることができると思われがちです。

1976年、巨匠脚本家のアーネスト・レーマン氏は、アメリカン・フィルム・インスティチュートで若手監督を前に次のように話しました。「物を書くことについて、殆どの人が脚本家と同じ程分かっていると感じている。ライターが監督に演出について指示を出すのは考えられないだろう。プロデューサーにプロデュースについて、俳優に演技について、撮影監督にシーンの照明について指示を出したりすることも考えられないだろう。しかし、ライターにライティングについて指示を出すことは珍しいことではない。」

「ライター」と「ライティング」を「翻訳者」と「字幕作り」に置き換えると、この文章は映画・映像翻訳者及び字幕作りの現状に非常によく当てはまります。正に、誰でも字幕が書けると思われているのです。しかも、字幕は最小限の時間で安く作られる(むしろもっと安くなるべきで)、字幕アプリさえあれば誰でもでき、翻訳者は単なる「サービス提供」をしていると思われています。

従って、当該言語に加えて映画の文法も修得しているプロフェッショナルな翻訳者が作品の字幕を制作することの重要性を世界中の映画監督に訴えます。私たちは、映画というのは、想像力と資金と技術を結集させた長いプロセスの結果であることを理解しています。だからこそ、プロフェッショナルな翻訳者として、常に字幕のインパクト、読みやすさ、分かりやすさ、作品の全体像とリズムとの調和を意識しています。つまり、プロフェショナルな翻訳者は字幕作りのわざをマスターしているのです。

幸い、他の映画業界の関係者にも字幕の重要性は認められています。例えば、アメリカの配給会社Rialto Picturesの設立者ブルース・ゴールドスタイン氏は、『The Art of Subtitling』と題した短編ドキュメンタリーまで作ってしまいました。その中で彼は次のように述べています。「映画翻訳、スクリーンの下部に映っている文章は殆どの人に気づかれないものだ。悪い字幕ではじめて気付かれる。これは字幕のあるべき姿です。良い字幕は敢えて目立たない、殆ど目に見えないようにつくられている。」

私たちも字幕は目立たないものであるべきだと信じています。と言うのも、字幕が映画の手法に干渉しないかぎり、映画手法と一体化するからです。

翻訳されていない作品は、その言語圏以外の観客にはあまり意味を成しません。しかし、字幕は外国の観客も作品のオリジナル言語を分かる人々と同じように作品を楽しめるように作成しなくてはなりません。失敗した字幕は目立ってしまい、見る側が映像やダイアログや音声に存分に集中できなくなってしまいます。

アルフォンソ・クアロン監督による『ROMA/ローマ』の英語及びフランス語の字幕版はその最近の一例です。(恐らく他の言語版にも当てはまるでしょう。)世界中で注目を浴びた作品であるだけに極めて残念な例です。同映画は監督賞の他に、外国語映画賞及び撮影賞のアカデミー賞を受賞しましたが、受賞は英語字幕版に基づいて決定されました。同英語字幕版はプロフェッショナルな字幕基準を大きく下回る上(https://beta.ataa.fr/blog/article/roma-french-subtitlesをご参照)、撮影監督が生み出した優れたシネマトグラフィーの魅力を十分に発揮させることに失敗しています。他の言語の字幕版もサウンドトラックに聞こえるオリジナルのスペイン語やミシュテカ語からではなく、英語版から翻訳されたそうです。

現在、『ROMA/ローマ』は業界の悪習の最も知られている事例でしょう。しかし、他にも多数の例があり、私たちプロフェッショナルな翻訳者としては、今後あってはならないことだと考えています。監督が自らの作品の字幕に関わる場合、プロフェッショナルな翻訳者との協業が重要です。これも『ROMA/ローマ』の一つの教訓です。

カラーグレーディングやミキシングに関して、監督はその結果を一緒に決めます。この分野では監督自身のヴィジョンを実現するガイドとなるカラーグレーディングやミキシングのエキスパートと緊密に協働します。同じことが映画文法の一部である字幕にも言えます。

「字幕のわざ」をマスターしているプロフェッショナルな翻訳者は適切な訳に加えて、字幕の適切な位置、形と内容のセンスもあります。作品と一体となる字幕をつくるため、私たちプロフェッショナルな翻訳者は想像力を尽くします。私たちは「サービス提供者」ではなく、作品の作る側と見る側、そして作品自体のために従事する者です。

万国の監督よ、私たち翻訳者は皆様をサポートし、皆様の作品が、作品内の言語を分かる人々以外の観客にも伝わるよう、全力を尽くしています。皆様の作品を翻訳するというクリエーティブな作業を今後とも果たせるため、今ここで、皆様のサポートを呼びかけています。

ATAA – Association des Traducteurs/Adaptateurs de l’Audiovisuel
AVTE – Audiovisual Translators Europe
AVÜ – Untertitelforum e.V.

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